財産管理

       
成年後見・財産管理

成年後見・財産管理と司法書士

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害等の理由で判断能力の不十分な方々が法律行為(不動産・車等の売買、介護施設に入る契約の締結、遺産分割協議等)を行う際に、保護し、支援する制度です。
また、平成14年の司法書士法改正により、司法書士は、法令(司法書士法第29条、同施行規則第31条)にもとづき、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務をすることができるとされました。

成年後見制度

認知症のお年寄りの方や知的・精神障害のある方は、判断能力の面でハンディキャップを負っているために、通常の人と同等に契約をしたり法的手続をしたりすることが困難です。
こうした人たちを悪質商法等から守り、安心して暮らしていけるよう、法律面からサポートするのが成年後見制度です。
成年後見は、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2つに分けられます。

法定後見制度と任意後見制度の違い

成年後見制度は、更に「法定後見制度」と「任意後見制度」に分けることができます。

法定後見制度とは、すでに判断能力が低下している成年者に対して利用される制度です。
この点が、任意後見制度の被支援者(被後見人)が判断能力のある内に、自らで任意後見人や後見事務内容を決めていくこととの違いです。

財産管理委託契約と成年後見制度の違い

財産管理委託契約(ざいさんかんりいたくけいやく)とは、民法上の委任契約の規定に基づいて締結される一種の契約のことをいいます。
その内容としては、自分の財産の管理や日常生活事務の全部または一部について、あなたが任意に選んだ人に具体的な代理権を与えることで、その管理を委任するというものですが、任意代理契約と呼ばれることもあり、成年後見制度、特に任意後見制度と内容が似ていることから、両者の違いを理解しておくのがとても大切です。

財産管理委任契約と成年後見制度との大きな違いは、成年後見制度が精神上の障害に基づく一定以上の判断能力の減退があった場合に利用できる制度であるのに対し、財産管理契約はこのような制限がなく、本人に判断能力があればいつでも利用できるという点です。
また、成年後見制度のうち法定後見制度は裁判所で所定の手続きをとる必要がありますが、財産管理委託契約は民法上の委任契約と同様に、当事者間の合意で効力が生じ、内容についても自由に定めることができるという違いがあります。

財産管理委任契約は、任意後見制度と共に利用されることも多く、判断能力が徐々に低下するのが見込まれる場合に継続した財産管理をしてもらいたいケースや、葬儀の希望など死後の処理をきちんと任せたいといったケースで活躍しています。

「法定後見」

1.法定後見制度とは、現に判断能力が不十分な状態にある人に対して、家庭裁判所が後見人・保佐人・補助人などを選任し、安心して生活できるようサポートする制度です。

例えば以下のように
  1. 認知症の親を悪徳商法から守りたい
  2. 知的障害のある子どもの将来が心配
  3. 将来、自分の判断能力が衰えたときが心配
  4. そろそろ一人暮らしが困難になってきたので、各種の契約を自分に代わってやってほしい
  5. 判断能力が不十分な家族が所有している不動産を売却して入院費等にあてたい
  6. 寝たきりの親の世話をしているが、他の兄弟や親族から財産管理の面で疑われている

等の不安や心配がある場合は、ぜひご相談ください。問題に司法書士がかかわっていくことにより、認知症の高齢者や障害者ご本人やご家族が安心して生活を送ることができるようにサポートしていきます。

2.法定後見制度の手続の流れ
①ご相談
②状況把握
③方針決定
④申立書の作成
⑤裁判所等への各種手続
⑥後見開始

(※ 後見開始までの期間は、案件により異なります。)

「任意後見」

任意後見制度は、本人自身が、将来判断能力の衰えた場合に備えて、あらかじめ公正証書による任意後見契約によって後見人を選任しておく制度です。

今後急速に高齢化が進む中、司法書士が成年後見の分野で果たす役割はますます重要になってきているのです。

任意後見契約とは

判断能力が不十分になった後に支援を開始させるための任意後見契約に関する法律に基づく契約です。
契約時に当事者間で合意した特定の法律行為の代理権によって支援します。同意権・取消権による支援はありません。

どんな人に頼めるの?

基本的には、支援できる人であればどんな人でも支援者になることができます。たとえば、自分の子どもや孫はもちろん、交流のある甥姪や親しくしていて信用のおける友人。
支援者を選ぶことは、非常に重要なことです。
十分に検討して、この人なら任せても安心と思える人に支援をお願いしましょう。

任意後見制度の流れ

(1) 任意後見制度の利用を考え始める
今は元気だが、自分の判断能力が落ちた時が心配になり支援を受ける準備を始める決意をした時がスタートです。
(2) 支援して欲しい内容を決める
自身の判断能力が落ちた場合にどのようなことを手伝ってもらいたいのか、あなたのライフプランに沿ってある程度決めておきます。
例えば、自分一人で生活することが難しくなった場合に「在宅でケアを受ける」「施設でケアを受けるならどの施設がいいのか」「病院にお世話になるにはどの病院がいいのか」など、自身の希望を元に、支援してもらう内容を決めましょう。
(3) 支援してくれる人を決める
あなたのライフプランを元にサポートをしてくれる信頼できる人を任意後見人として選びましょう。
一般的には、家族・友人・弁護士や司法書士などの専門家などから、適任者とされています。
あなたのライフプランやどう生きたいのかという想いを、腹を割って話し合える人物が望ましいです。
(4) 任意後見人との契約手続き
家自身が必要とする支援内容を盛り込んだ契約を任意後見人との間で結び、公正証書を作成します。
手続きは最寄りの公証人役場で行いましょう。
あなたから依頼を受けた公証人が法務局へ任意後見契約の登記を申請し、契約が結ばれます。
(5) 任意後見をスタートするには家庭裁判所への申し立て
認知症などの症状により任意後見人のサポートが必要となった場合は、家庭裁判所への申し立てを行いましょう。
任意後見制度を利用するには、家庭裁判所の審判によって任意後見監督人を選任してもらう必要があります。
任意後見監督人は、任意後見人が契約によって定められた仕事をきちんと行っているかのチェックを行う人になります。
(6) 任意後見制度の利用開始
任意後見監督人が選任されると、任意後見人による任意後見契約の内容に沿ったサポートが行われます。

よくある質問

Q.成年後見の申立てができる人は誰ですか?
A.成年後見制度の申し立ては誰でもできるわけではなく、本人・配偶者・四親等内の親族・市町村長などに限られています。
Q.浪費者は成年後見制度を利用できますか?
A.浪費者は成年後見制度を利用することはできません。ちなみに、以前の禁治産制度では浪費者も準禁治産者として保護されていました。これは、禁治産制度が家制度の思想を背景にもち、もっぱら家産の維持という考え方に基づいてからでしたが、成年後見制度では家制度の思想は排除されて個人主義の考えに基づくからです。
Q.申立ては自分でできますか?
A.成年後見の申し立て自体はそれほど難しいものではありませんので、司法書士に頼まなくてもできないことはありません。ただし、集めなければいけない書類はかなり多いので、一般の方には相当の負担となります。
Q.成年後見が始まるとどうなりますか?
A.本人がご自身で判断ができない場合に,後見開始の審判とともに本人を援助する人として成年後見人が選任されます。この制度を利用すると,家庭裁判所が選任した成年後見人が,本人の利益を考えながら,本人を代理して契約などの法律行為をしたり,本人または成年後見人が,本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことができます。ただし,自己決定の尊重の観点から,日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については,取消しの対象になりません。

後見が開始されると,印鑑登録が抹消されるほか,資格などの制限があります。
Q.任意後見と法定後見はどのような違いがあるの?
A.もっとも大きな違いは、法定後見が法律によって要件や効果が定められる制度であるのに対し、任意後見は基本的には当事者の契約である点です。
Q.任意後見と信託はどのような点が違うの?
A.信託は財産を管理処分する者たる受託者に財産の所有権が移転します。任意後見はあくまで財産の所有権は本人に帰属したまま変わりません。
Q.任意後見人にはどのような義務がありますか
A.委任契約の受任者として当然善良なる管理者の注意義務があることに加え、委託に係る事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない義務があります。
Q.任意後見人になるのに特別な資格が必要?
A.不要です。ただし欠格事由にあたれるときは任意後見人になることはできません。  任意後見人の欠格事由は法定後見人と同じもののほか、本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族や不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者も任意後見人にはなれません。