会社の登記(商業登記)
会社の登記(商業登記)と司法書士
商業登記は、株式会社などの法人について、設立(誕生)から清算(消滅)にいたるまで一定の事項を法務局で登記することにより、法人の内容を社会一般の人に公示することで、法人を巡る取引の安全を実現する制度です。 司法書士は、これら商業登記手続きについて、書類の作成や申請代理業務を行います。 登記の種類にはいくつかあり、法人の内容に生じた変化の原因に応じて申請する登記の種類が決められています。
登記の原因 | 申請する登記の種類 |
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新たに会社を作りたい |
会社設立登記 |
代表取締役や取締役、監査役などの会社役員が変わった |
役員変更登記 |
会社の名前や目的を変更したい |
商号変更・目的変更登記 |
会社の本店を移転したい |
本店移転登記 |
事業拡大のために資本を増加したい |
増資の登記 |
会社経営をやめたい |
解散・清算結了の登記 |
商号変更・目的変更登記
本店移転の登記
会社(本社)の所在地を移転した場合には登記をする必要があります。
「本店移転登記」は定款に本店についてどのように定めているかによって手続きが異なります。また、同じ法務局管轄内で移転する場合と別の法務局管轄へ移転する場合でも手続きや登記費用が異なりますので、お気軽にご相談ください。 注意すべきは、移転先にすでに同一・類似の商号で営業している会社があるかどうかです。 移転先の地域で有名な会社と同一・類似の商号で同じ商売をしてしまったり、不正な目的で他の会社と勘違いさせるような商号で商売をしていると、商号の差止請求を受けたり、損害賠償請求を受ける場合があります。 したがって、移転される場合には後日トラブルが起こらないよう事前に商号の調査をお勧めします。 本店移転の変更登記は、原則として定款変更の決議後、本店所在地では2週間以内、支店の所在地では3週間以内に申請しなければなりません。資本金の増資・減資
増資の方法と流れ
増資の3つのパターン
① 募集株式発行(第三者割当)
② デッド・エクイティ・スワップ
増資の流れ
① 発行可能株式総数の確認
② 株主総会の決議
③ 株式の申し込み予定者への通知
④ 株式の申込
⑤ 割り当て決議
⑥ 割当株数の通知
⑦ 出資金の払い込み
⑧ 登記申請
減資について
減資の流れ
① 株主総会の特別決議
② 債権者への減資公告・催告【債権者保護手続】
③ 異議のある債権者への対応【債権者保護手続】
④ 登記申請
1. 医療法人
医療法人の種類
- 医療法人社団
- 複数の人が集まって設立された法人であり、法人設立のため、預金、不動産、医療機器等の備品を拠出して設立する法人です。 なお、医療法の改正により、現在は社団である医療法人は出資持分のない法人しか設立することはできません。 法人が解散したときは医療法及び定款に定める方法により残余財産を処分します。 なお、改正前の医療法において設立された医療法人社団には、出資持分のある法人や、払戻しに際し出資額を限度とする旨が定款において定められた出資額限度法人があります。
- 医療法人財団
- 個人又は法人が無償で寄付した財産に基づいて設立される医療法人で、財産の提供者(寄付者)に対しても持分を認めず、解散したときは医療法及び寄付行為に定める方法により残余財産を処分します。 【定款・寄付行為】法人の目的・組織・活動・構成員・業務執行方法等についての基本規則を定めた文書を、社団法人においては「定款」と呼び、財団法人においては「寄付行為」といいます。
医療法人設立の手続きの流れ
- 病院(診療所)開設許可申請
- 病院(診療所)使用許可申請
- 病院(診療所)開設届
- 病院(診療所)廃止届(個人開設)
医療法人設立のデメリット・メリット
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医療法人設立のメリット
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- 経営体質の強化
- 病院の経営と医師個人としての収支を明確に分離し、法人会計を採用することで適正な財務管理ができます。
- 社会保険診療報酬支払基金から支払われた診療報酬が源泉徴収されないため、資金を有効に利用できます。
- 個人経営の場合、理事長に万一のことがあった場合、診療所を廃止し相続人である医師が新たに開設しなければなりません。 これに対し医療法人の場合、継続して診療所を経営することが可能となり、スムーズな事業承継対策や相続対策等を計画的にすすめやすくなります。
- 医療基盤の拡大
- 個人経営では認められていない分院開設が可能になります。 さらに、医療法人化により、今後需要拡大が予想される有料老人ホーム・老人保健施設や訪問看護ステーションなど介護事業を運営することができるようになり、幅広い事業展開が可能となります。
- 節税効果
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- 役員給与を受けることにより、給与所得控除の適用が受けられます。
- 親族を役員にすることにより、役員報酬を支払うことができます。
- 医療法人にすることにより退職金の支給が可能となります。
- 生命保険料の支払い額を法人の損金(経費)として処理できます。
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医療法人設立のデメリット
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- 付帯業務の制限
- 医療法人の医業に付随する業務(付帯業務)は、医療法人の主たる業務に支障がない範囲で運営が許可されていますが、その業務範囲は制限されています。 もちろん非営利性の観点から営利事業は行えません。
- 社会保険への加入義務
- 社会保険が強制適用となり、役員及び従業員は健康保険・厚生年金に加入しなくてはなりません。 その分、法定福利費の支出が増え負担が増加します。 なお、健康保険については、一定の手続きにより医師国保・歯科医師国保へ加入し続けることが可能です。 (個人病医院の場合、常勤の職員が5人未満であれば社会保険への加入義務はありません。)
- 事務手続の増加
- 医療法人は設立後に定期的な届出が必要になりますので事務手続きが増加します。 決算事業年度終了後に決算の届出、および、総資産の変更登記、並びに、変更登記にかかる届出が必要となります。 また、定款の記載事項に変更があった場合は、都道府県知事へ定款変更認可申請書を提出し許可を得る必要があります。
- 残余財産の分配禁止
- 医療法人が解散した場合、残余財産の帰属先は『国、地方公共団体、又は他の医療法人等』に制限され個人への分配は認められません。
- 交際費の損金算入制限
- 個人経営の場合、交際費は全額損金、つまり経費として認められていますが、医療法人では資本金の額に応じて制限があります。
- 利益金の配当禁止
- 医療法人は『非営利性』を求められるため、剰余金の配当が禁止されています。 したがって、利益が出た場合でも出資者に対して利益の配当はされず、剰余金は医療充実のための設備投資や退職慰労金の原資に充てるほか、全て積立金として留保しなければなりません。 また、配当ではないが、事実上利益の分配とみなされる行為も禁止されています。 医師個人は、原則として役員報酬を受け取ることになり、役員報酬以外の自由に処分できる資金がなくなります。
役員のうち、理事長については登記をしなければなりません。理事、監事の任期は2年を超えることはできない(医療法第46条の5第9項)と定められており、理事の中の長である理事長も理事の任期の満了で退任することとなります。その際には、社員総会及び理事会の決議で再任するか他の方が理事長に就任するかして、その理事会決議の日から2週間以内に登記をしなければなりません。
資産の総額の登記医療法人の登記事項の一つに資産の総額という項目があります。これは、毎年の決算で作成した貸借対照表のうち純資産の部に計上された額を表しており、この額に変更があった場合には、その変更の登記をしなければならないというものです。基本的には毎年何らかの変動があるため、この登記は毎年出さなければならないという事になります。
2. 社会福祉法人
- 社会福祉法人の登記とは?
- 社会福祉法人とは、社会福祉法の規定に基づいて、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人です。 社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手として、その提供する福祉サービスの質の向上や事業経営の透明性の確保がもとめられております。
社会福祉法人の設立の流れ
社会福祉法人設立の要件
役員に関する要件
- (1) 理事
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- 定数が6名以上であること。
- 各役員と配偶者、三親等以内の親族の関係にある者が、役員の総数の2分の1を超えないこと。
- 社会福祉事業についての学識経験を有する者または地域の福祉関係者を加えること。
- (2) 監事
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- 定数が2名以上であること。
- 監事のうち1名は財務諸表を監査することができる者、1名は社会福祉事業についての学識経験を有する者または地域の福祉関係者であること。
- 各役員と配偶者、三親等以内の親族の関係にある者が、役員の総数の2分の1を超えないこと。
- (3) 評議委員会
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- 措置委託事業、保育所経営事業、介護保険事業のみを行う法人を除き、必ず設置すること。
- 評議員の定数は理事数の2倍を超えること。
- 法人の施設の整備または運営と密接に関連する業務を行う者が評議員総数の3分の1を超えないこと。
- 地域の代表を加えること。
- 利用者の家族の代表を加えることが望ましい。
資産に関する要件
- (1) 施設を経営する法人(下記のいずれか)
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- 原則、社会福祉事業を行うために直接必要なすべての物件について所有権を有していること。
- 国または地方公共団体から貸与もしくは使用許可を受けていること
- (2) 施設を経営しない法人
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原則として、1億円以上の基本財産を有していること。
3. NPO法人
- NPO法人の設立登記とは?
- NPO法人の設立は、所轄庁から認証書が届いたらそれでOK!ではありません。法務局で「法人登記」を行って、はじめて法人が成立します。 法人登記とは、あらゆる法人が、組織の重要事項を登録し、社会に公開する制度。NPO法人も法律によって、登記を行うことが義務付けられています。 しかも、嬉しいことに、NPO法人の登記は、登録免許税が免除されています!(株式会社だと、設立登記の登録免許税は15万円!) 認証日から半年を過ぎても設立登記をしていない場合、認証取消しの対象となってしまいますので、うっかり忘れないように注意しましょう。
NPO法人の設立までの流れ
設立登記の完了まで3~5ヶ月程度かかりますので、NPO法人はその他の株式会社やLLP、LLCに比べてかなり時間がかかるといえます。 設立手続きを自分ですることも可能ではありますが、かなり煩雑な作業になると思いますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
- Q.株式会社と有限会社はどう違うのですか?
- A.会社法施行前は、有限会社法にもとづき、有限会社が設立できました。会社法施行(平成18年5月1日)とともに有限会社法は廃止になりましたので、現在は、有限会社は設立できません。
- Q.登記申請はどこにすればよいのですか?
- A.商業登記の事務は,営業所の所在地(会社の本店)を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が管轄登記所としてつかさどるものとされています(商業登記法第1条の3)。 つまり,会社の本店をどこに置くかによって,管轄登記所が定まり,当該登記所に登記申請を行うこととなります。
- Q.会社を作りたいのですが、どのような手続きをすればいいのですか?
- A.会社を作る場合、会社の種類によって多少手続きは異なります。 例えば株式会社を作るには、まず会社の設立メンバーである発起人が、定款を作成しなければなりません。定款とは、会社の商号や事業の目的、役員の選任方法など、会社を運営する上での根本的なルールを定めるもので、国で言う憲法にあたるものです。 定款に必ず記載しなければならない内容は法律で定められていますので、記載漏れがないか注意が必要です。 定款を作成したら公証人に認証してもらい、会社の資本金となるお金を準備する必要があります。そして、発起人全員の話し合いにより会社の役員や具体的な本店所在場所などを定めたら、所定の事項を記載した会社の設立登記申請書を法務局に提出する必要があります。
- Q.商業登記制度は、何のためにあるの?
- A.会社は、定款で定められた目的の遂行に必要な範囲内で、その会社の名において権利を取得し、義務を負担することができます。しかし、会社と取引をしようとする者は、会社の存在そのものを五感によって認識することはできませんから、会社の存在・内容を確認する方策を講じなければ、安心して取引をすることができません。そこで構築されたのが、商業登記制度です。
- Q.会社の設立日を自分で決めることはできないの?
- A.会社は、登記所で登記されたときに成立します。実務では、登記所に設立登記を申請し、無事に登記が完了すると、登記を申請した日が成立日となりますので、希望の設立日がある場合は、不備のないように申請書類を整えて、設立希望日の登記所開庁時間内に管轄の登記所に設立登記を申請する必要があります。土・日・祝日・年末年始は登記所は閉庁日ですので、設立日とすることはできないことになります。